夜目遠目傘の内など申しますけれども、たまたま雨宿りに立ち寄った宿で共に一夜を明かし、行く末を誓い合う仲になりましたという元祖一目惚れのお目出度いお唄でございます。
『黒髪』と並ぶ、代表的なお三味線の手ほどき曲でもございますし、『鶴』『幾千代』『友白髪』などいかにも縁起のよいお言葉が出てまいりますことからご祝儀の場でも弾かれまして、皆様よくご承知の曲とは存じますが、わかりやすくて良い解説文を見つけましたので、ここに「古典教材ライブラリー(大日本家庭音楽会発行)」より引用させていただきます・・・。
『我が田に水を引くの論ではありますが、三味線の声曲のいろいろある中にありまして、品の良さということを身上にしておりますのは、地歌と申しましても宜しかろうかと存じます。庶民の身辺の、世話にくだけたことを写しておりましても、それが地歌の手となり節となりますと、汗や埃の落とされた上品な韻きとなって耳に伝わって参ります。
地歌の端歌ものは、恋の思いを述べたものが多く、次に四季の風物や祝賀慶福の心を表したものが多いようで、この曲も鶴の鳴く声に寄せておめでたい気持ちをうたっております。
『万葉集』巻11にある「難波人芦火焚く屋の煤してあれど己が妻こそ常めずらしき」という歌を下敷きにして、これを地歌調の文句に仕立てたものらしく、成程この古歌を軸にしてみますと、難波津も芦葺く宿も友白髪も、それぞれが上手につながって活かされていることがよくわかります。
夥しい万葉の歌の中からこれを見つけたことは、この曲にとって中々の手柄と申せましょう・・・・』