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■地唄_すり鉢・れん木・せっかい(地唄端唄物)

作曲 二昆都里石 / 作詞 油屋茂作

曲:すり鉢・れん木・せっかい
演奏時間:04’05”
演奏者 小野真由美 (すり鉢)
    大亀 由紀 (れん木)
    石田 尚子 (せっかい)

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曲目解説
他の特定の曲と同時に演奏できるように作曲された作品を『打合せ物』と申します。各々は独立した別の曲なのですが、上手に寸法を合わせてあるのです。
様々ございます中には、『菜蕗(ふき)』という御祝儀の箏曲と、『夕べの雲』という不祝儀の三絃曲とを一緒に打合せ、「人生の禍福はあざなえる縄のごとし」という悟りの境地を唄いこみ、興を味わい遊んでいたりするといった奥深い世界もございます。これなどは、私のような浅はかな若輩者にはまだまだ、たしなむ資格のないものと感じております。
今回の『すり鉢』は、その打合せ物の中のひとつでございます。すり鉢と、れん木(すりこぎ)と、せっかい(すり鉢の中身をかき出す道具)という、お互いになくてはならない物同士を打合わせるのですから、弾いて楽しく、唄っておしゃれな楽しい趣向です。それぞれの曲には、それぞれ別々の唄がついておりますけれども、今回はすり鉢だけのお唄にいたしました。
歌詞
海山を越えてこの世に住みなれて
比翼連理と契りし仲を
煙をたつる賤の女が
心々に逢わぬ日も
逢う日も夜はひとり寝の
暮れを惜しみてまつ山かずら
昼のみ暮らす里もがな
(古今和歌集 賀の部 読人しらず)
さて、海山を越えてこの世に住みなれてという唄い出しです。若い頃から何とはなしに唄っておりましたが、ある日ふと、主語は『魂』では?と気付きました。来世を誓い合った(に違いない)互いの魂が、幾年の歳月も海も山も越えて、やっとのことで、この世で巡り合えたそんな嬉しさに、はやる気持ちを、サラリとした心意気で唄ってみたいものです。
長恨歌にもございますように比翼連理(空にあっては比翼の鳥、地にあっては連理の枝)と契りし仲ですもの・・・。昼間だけではなくて、いつもずっと一緒にいたいものです。ところが夜になりますと、お台所を預かる賤の女が、すり鉢は洗って棚の上、れん木は別のところに吊るして片付けてしまいます。せっかく逢う日も夜はひとり寝をしなくてはなりません。なんて心寂しいこと・・・。
(付記)
昼下がりの高輪
三月のポカポカお天気のとある日、若いおふたりとご一緒に『れん木』・『せっかい』を打合わせて遊びました。
地唄は本来、お座敷唄でございますのでこうやってお稽古場で遊んで過ごしますのが、何と申しましても一番の醍醐味楽しさ、面白さは格別のものでございます。

さあ、今度は何を弾いて遊びましょ・・・。